木造オフィスビルABC(2022年改訂版)

近年、企業にとってESGの取組みは欠かせないものになりつつあります。その中で、環境(Environment)への取組みの一環として木造オフィスビルが注目されています。
木造のオフィスビルを建設すると大量の木材を使用することになりますが、木材として使っている限り炭素は放出されないので、炭素は貯蔵されることになります。同時に伐採された山に植林が施されると、若い木は活発に光合成を行い二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。したがって、木造のオフィスビルを建てると大きなCO2削減効果が見込めます。 SKYの試算では、鉄骨造のオフィスビルと比較して約2.5倍のCO2削減価値があるという結果が出ています。

規模のはなし
オフィスビルの場合、用途による耐火要件はありません。したがって、建物の規模と建設地の防火地域区分により耐火要件が決まります。建物の規模がそれほど大きくないとき、4階建以下の場合には準耐火建築物やその他建築物として設計できる可能性があり、木の構造材を現しで使えます。
5階建以上の場合は耐火建築物となります。耐火建築物は階数が増えるほど想定される火災の時間が長く設定され、建物の中にいる人が安全に避難できるようになっています。また、火災中及び火災終了後に消防活動が行われなかった場合にも建物が崩壊せず、自立し続ける建物であることが求められます。
後述のとおり、木造の3時間耐火の技術が開発されているので、耐火の観点から言えば、どれほど階数が増えても木造オフィスビルを建てることが理論上は可能です。実績という点では、2時間耐火の技術は使用例も増えてきており実践的なレベルにありますが、3時間耐火の技術はまだまだ慎重な運用が必要な段階だと考えられます。(2022年現在)

木造マンションの規模

耐火のはなし
建築の骨組みをつくる「柱」「はり」「床」「壁」を木造でつくる場合、耐火の方法には次のようなものがあります。
1 被覆タイプ
木を燃えないもの(耐火被覆材、せっこうボードなど)で完全に覆う方法です。構造体の木は見えなくなりますが、工夫すれば補助的な構造部材(ブレースなど)で木を現しで見せることができます。
幅広く研究・開発がされており、誰でも使いやすい技術です。1時間・2時間・3時間耐火の技術が確立されています。
2 燃えしろタイプ
燃えしろとは火事になったときに燃える分だけ構造材を大きくしておく方法です。火災が起こると燃えしろだけが燃え、燃焼が止まる仕組みになっています。構造体の木を現しで見せることができます。
製造法が複雑なため、使える部材が限定されます。1時間・2時間・3時間耐火の技術が確立されています。
3 木質ハイブリッドタイプ
鉄骨を木ですっぽり覆う方法です。木が火災の熱から鉄を守り、火災が進むと鉄が熱を吸収して木の燃焼が止まるという仕組みです。厳密に言うと鉄骨造ですが、鉄は木で完全に隠れてしまうので見た目は完全に木造です。
1時間耐火の技術が確立されていますが、2時間・3時間耐火の技術開発は今のところ進んでいません。

木造オフィスビルの場合は、フロアごとに一体的なユニバーサル空間として設計されることが多いので、[2]や[3]のタイプを採用して柱・はりといった構造体を現しで見せると効果は絶大です。ESGへの取組みを表現するという意味においても、木を現しで見せることは重要です。また、ブレースなどの耐震要素をデザイン上のアクセントとして木で現し表現とする方法も効果的です。

木造耐火の種別

環境のはなし 企業のはなし
オフィスビルは、企業や団体が所有する自社ビル系のものになると、企業をあらわす顔になるものです。木造を採用することによるCO2削減効果は、ESGへの取組み、環境意識の高さを内外に強くアピールすることになり、ブランド力の強化にも繋がります。 特に自然派の企業にとっては、やっぱりコンクリートや鉄より木!ということで需要も高まって来ています。

SKYが設計監理に携わった「国分寺フレーバーライフ社本社ビル」は、まさにそうした企業の自社ビルです。エッセンシャルオイルを扱い、国分寺という土地に根ざして25年、自然への敬意とその恵みへの感謝、社員さんへの愛そして地元への愛を「木造オフィスビル」で実現されました。
国分寺駅から徒歩2分の場所に建つ木造オフィスビルは、街の景観を違うものに変えてしまうほどのインパクトがあり、地元の人たちに愛されています。また、ここで働く社員さんたちにも、仕事に集中できる、社員どうしの交流が盛んになった、と好評です。柱と梁が木で出来ているだけ、なのですが、そこに流れる空気には一般的なオフィスとは違う何とも穏やかなものを感じます。

オフィスの場合は内装木質化という手法もありますが、ビルを木造で建てると木材使用量が桁違いに増えますから、環境への貢献度も大きくなります。また、フレームが木で構成された空間には、表層的なデザインとは異なる説得力があります。


おわりに
コロナ禍を体験し働き方が多様化していくなかで、オフィス空間に求められる質も変わってきています。木造オフィスビルが沢山できるようになれば、そこで過ごす時間は心地よいものになり、物事の捉え方がよりおおらかに、柔軟になるでしょう。そして、仕事への集中と社員の交流が同時に促され、クリエイティブな環境が実現できます。SKYはその環境づくりをお手伝いします。